埼玉県川口市のリウマチ科・リウマチ専門医・リウマチ検査 新しい治療法

新しい治療法

生物学的製剤とは

生物学的製剤とは

生物学的製剤とは、最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された新しい薬で、生物が産生した蛋白質を利用して作られています。関節リウマチの炎症や痛み・腫れ、そして骨や軟骨などの関節破壊を引き起こす原因となる物質を抑えることにより、その効果を発揮します。この生物学的製剤の登場により、関節リウマチの治療は大きく進歩しました。

アメリカのリウマチ専門医の一人でテキサス大学教授であるフライシュマン博士は、「従来の薬ではどんなに工夫しても、病気がほぼ治ったに等しい寛解(かんかい)と呼ばれる状態にもっていける人は40%前後であったが、生物学的製剤を90%以上の人に積極的に使うようになった結果、それが75%にまでなった」と感慨深げに話していました。これは、彼一人に留まらず、米国で生物学的製剤を積極的に使う多くの医師の共通した感想です。

最近では、関節リウマチの関節破壊が抑制されるだけでなく、人によっては壊れた関節の一部が元に戻った、という報告があるほど、これまででは考えられなかった治療成績が次々と発表されています。生物学的製剤の標的としては、炎症と関連するサイトカインが第一目標となりました。今のところ、アメリカで承認されている関節リウマチに対する生物学的製剤の四つは、すべて炎症性サイトカインを標的としたものです。

生物学的製剤の種類

現在日本では7種類(下記参照)の製剤の使用が可能となっています。各々優れた作用、相違点があります。A剤が効かなかった人がB剤が、またその逆もあるのです。言わば、その使い方で効果が変わってきてしまいます。その有効性、問題点、投与時期、方法、費用などについて責任をもってご対応させて頂きます。迷われたらまず相談してください。

商品名 特徴
レミケード 「抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤」と呼ばれており、海外では欧米を中心にすでに80ヵ国以上で、100万人以上の関節リウマチやクローン病の患者さんに使用されている薬剤である。日本においては、3万人以上の患者さんに投与されている。
エンブレル 炎症発生のプロセスにおいて重要な役割を果たしているTNF-αに結合することで、TNF-αを生物学的に不活化させるとともに、関節リウマチの病態に関与するもう1つのサイトカインであるLT-αにも結合することが確認されており、炎症作用を著しく抑制することができる。
ヒュミラ 世界初のヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体。関節リウマチをはじめ、自己免疫疾患の炎症反応に関わるTNFαを中和することで作用を発揮する。また、2週間に1回の皮下注射により、関節リウマチの症状改善のみならず、関節破壊の進行を抑制する効果も期待できる。
アクテムラ 「抗ヒトインターロイキン6レセプターモノクロナール抗体製剤」と呼ばれる。関節リウマチの様々な原因となると考えられている物質の1つである、インターロイキン6の作用を抑えることにより、関節リウマチの症状を改善する治療薬である。
オレンシア オレンシアは、日本では2010年7月23日に製造承認を取得した新しい治療薬である。抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを阻害し、関節リウマチの発症に関与するT細胞の活性化を抑制する。これまでの生物学的製剤よりも上流で作用するため、既存薬では十分な効果が得られなかった症例にも有効なのではないかと期待されている。
海外では、2005年12月米国で承認されて以降、2010年7月現在、世界50カ国以上で承認されている。
シンポニー 2011年9月に発売がはじまった最新の生物学的製剤。ヒュミラやレミケードと同様、TNFの働きを抑える抗体製剤。4週に1回の皮下投与で済む。投与方法がもっとも簡便であることが特徴に上げられる。
シムジア 「シムジア」は2013年にあらたに発売がはじまった生物学的製剤。
ヒュミラやレミケード、シンポニーと同様にTNFの働きを抑える抗ヒトTNFα抗体。

JAK(ジャック)阻害剤

AK阻害剤は、細胞の内側にあるJAKという酵素の働きを抑えることで、炎症や関節破壊を抑えるお薬です。
生物学的製剤と違って飲み薬となりますが、生物学的製剤と同等の効果が期待できる薬です。また、同じように肺炎、帯状疱疹など副作用に注意をしながら使用する必要があります。

JAK阻害剤の働き方

関節リウマチでは、体内で炎症を起こさせるTNFやIL-6などのサイトカインと呼ばれる物質が異常につくられたりすることで、関節の痛みや腫れ、そして骨や軟骨などの破壊が起きると考えられています。
JAK阻害剤は、JAKの働きを抑えることで複数のサイトカインの働きを抑え、その効果を発揮します。

生物学的製剤の問題

有効性の高い夢のような薬剤ですが、そう簡単には導入できません。使用前にはいくつか問題がありそれをクリアしなければなりません。

問題1.経済的問題

いずれの薬剤も非常に高価なため、経済的な負担が非常に大きくなってしまいます。

問題2.投与方法

点滴または自己注射のため手間がかかる。点滴の場合は病院に行って長時間点滴を受けなければならず、勤務されている方は毎回休暇をとる必要があります。自己注射の場合も、導入当初は短期間に何回も通院して、自己注射訓練を受けなければなりません。また、自分で注射を打つ手間も無視できません。

問題3.副作用管理

心不全、糖尿病の方は十分なコントロールをして安定しなければ使用はできません。水虫や虫歯もしっかり治してからとなります。また、レントゲン上過去に結核の既往が疑われる場合は、予防投与を十分に行わねばなりません。もちろん結核治療中は投与できません。これらの背景から、75歳以上の高齢者への投与は慎重な検討が必要となります。若い方でも十分な投与前検査が必要になります。

これらの問題をクリアして、初めて投与をすることになります。
通院事情、仕事や家事の都合など、ご自身のライフスタイルを考えながら、医師と相談し適切な薬・治療法を選びましょう。

患者さまのお声・体験

30代女性

薬を日々変えながら、病気と付き合う毎日でした。バイオ製剤を勧められてチャレンジしてみようと思いました。医療費が心配でしたが、支援制度もあるし家族も応援してくれました。
自己注射は、はじめは絶対無理を思っていました。でも、やってみると意外と簡単で一人でちゃんとできています。
私の使用している薬は2週間に1回の注射で済むので、仕事も続けています。
今年の冬は、友達とスノーボードを楽しみました。

50代女性

関節の炎症が強いこともあって、先生からバイオ製剤を勧められました。
不安よりも、今の痛みをどうしかしたいという気持ちでいっぱいでした。
自己注射は、「とんでもない!」と不安でいっぱいでした。
看護師さんから丁寧に教えて頂き、「他の患者さんも頑張っているよ」と聞いて私もがんばろうと思いました。
自宅で打つ1回目は緊張しましたが、意外と簡単でした。今は全く恐くありません。
家事では困ることがなくなり、旅行も楽しめるようになりました。

60代男性

痛みで身動きがとれない、歩くだけで、関節がボキボキ音をたてるような感覚でした。
イライラが不機嫌へとつながり、ビールを飲んで痛みを紛らわすこともありました。

女房と相談し、とにかく試してみようと、治療を始めました。
値段が高い薬と聞いていたので金銭面が心配でしたが、からだはお金には代えられない。また高額療養制度で負担額が軽くなりました。
今ではほぼ毎日、仕事ができるようになりました。